あたしは無意識に匙を持って白いものを食べた。
「……足りないよ。何かが足りないよ…」
「巳甘さん?」
「あたしやっぱり何か忘れてる。大事な事、大事な人…全部。このお粥の食べ方だって…匙の持ち方…京での暮らし方、短い間一緒に過ごしてきた人間…ううん、人達の事…」
「思い出した?」
あたしは首を横に振った。
「全部思い出してない。けど…声が聞こえるの…懐かしい声が。あたしを呼ぶ声。けど、後少しなの。」
「そう…。まぁ、無理はしない方がいいんじゃない?ゆっくりに___「それは駄目な気がするの。早く覚えないと…後悔してしまいそうで…」」
「…なら、早く思い出すように僕協力するから、そんな悲しい顔しないで?」
「うん…。ありがと。」
「ほら、冷めちゃうから食べて食べて。食べて町に行こう。」
それだけいうと沖田さんはいなくなった。
あたしは何かが足りない白い物…お粥を全部食べた。