暫く走って河原へと着いて彼女を下ろした。


「はぁ…、はぁ……。もう、追っ手は来ないでしょう。」



「ここは…?」



「河原ですよ。」



「かわら…?聞いたことない。」



聞いたことがない?



童でも知ってる河原が知らない…?



「記憶喪失ですか?もしかして…」


「記憶喪失…?何それ。生き物の名前?」


記憶喪失も知らないなんて…。


「違いますよ。記憶喪失は記憶がなくなる事です。今迄過ごしてきた事全て失うのです。」


彼女に簡単に説明した。


「それってどうやったらなる?」


「頭を強く打ったらなるのです。」


「そう…。ねぇ、人間。あたしの頭を強く殴って。」


「なんでいきなり…。それに僕は人間ですが、人間っていう名前ではありません。」


彼女は僕の言葉が聞こえてないのか


「早く殴って…。お願い…。」


「駄目です。」


「じゃあ殺して…。」


「もっと駄目です。」


「もう、生きたくない。」


彼女は一体何があったのですか?


彼女を守りたい。


そう思った。


「貴女は声からしてまだ若いですね。若いうちに死ぬなんて駄目ですよ。命を大事にしなさい。」


なんて、僕が言えることではないけど。


今は余りないが前までは此の手で刀で人の命を奪って言った。


「若い…?あたしはもう十分生きた。」


「十分って25歳くらいじゃないですか…。」


「いいえ。あたしはもう200年も生きたの。楽になりたい。」


「に、200年…?人間ならそんなに生きられない筈なんですが。嘘ついてるのですか?」


「あたし人間じゃないよ。蛇なの。」


彼女僕に連れられてから頭の中が混乱しているのですね。


「疲れているのでしょう…。遅いから眠りなさい。」


僕は彼女の頭を撫でた。


さらさらした結っていない髪。


彼女はいつの間にか寝ていた。


崩れる彼女の体を僕は支えた。


「おやすみなさい。」


僕は彼女を再び横抱きにして安全であろう森の中へ寝かせようと足を進めた。














これが僕と彼女の出会い。