僕たちは黙って句を聞いた。






おもしろきこともなき世におもしろく






この句は昔高杉が読んでいた句でもある


言い終わった高杉はとても冷たかった。


「まだ、やることがあるでしょう?!」


「桂もうやめとけ。」


僕を止めたのは山縣有朋。


高杉が率いる奇兵隊の一人でもあって昔からの友でもある。


「桂はん。巳甘にこの事伝えるんか?」


「伝えます。僕が巳甘さんを支えますから。」


「ようゆった。小五郎、今日はもう帰りぃや。後のことはわしらがやっちょく。」


「すいません。お願いします。」


僕は巳甘さんに伝えるために家へと帰った。






ガラガラ…


「只今帰りました…」


「…っあ!おかえり。早いね。」


「寝てなかったのですか?」


「うん…。小五郎さんが心配でねれなかったの。」


僕は巳甘さんに抱き付いた。


「こ…小五郎さん?!」


「巳甘さん…。高杉が………し__」


「小五郎さん、言わなくても分かってるよ。」


「高杉の奴、僕に病気の事黙ってたんですよ…」


「うん。」


「やることだって沢山…あるのに…」


巳甘さんの前では泣きたくなかったけど
とめどもなく涙が溢れる。


そんな僕を巳甘さんは背中をさすってくれる。


巳甘さんが愛しく感じて抱き締める力を強めた。


僕は巳甘さんの肩に顔をうずめて泣いた。