「では、決まりです。僕は向こうに行ってるんで着替えたら呼んで下さい。」


小五郎さんは軽くあたしの頭を撫でて部屋から出て行った。


熱い。


小五郎さんが触れたところが熱い。


あたしは我に返ってさっさと着物に着替えた。


そして昔氷雨…お龍ちゃんから貰った簪を結った髪に止めた。


うん。


おかしなところはない。


「小五郎さん、出来たよ!」


「入りますよ。」


ガラ


「どうですか?」


「いいですよ。目を瞑って下さい。」


あたしは言われた通りに目を瞑った。


唇に小五郎さんの指が当たる。


な、何してるの?


あたしの心臓は高鳴り聞こえてしまいそうな程だった。


「はい、いいですよ。」


あたしはゆっくりと目を開けた。


ドキン


小五郎さんの顔が近くにあった。


「どうしました?顔赤いですよ?」


「顔が近い…。」


「……!す、すいません!」


小五郎さんが勢いよく後ろに下がった。


二人の間に気まずい雰囲気が流れる。


「こ、これは紅と言って口に塗る物です…」


「口に?」


「はい、化粧の一つですよ。」


「そうなんだ。」


「これ、巳甘さんにあげます。」


「え?いいの?」


「ええ、これは女性が持つものですし。」


「あ、ありがと!」


あたしは嬉しくなって小五郎さんに抱きついた。