課長さんはイジワル2

「何、勝手なこと言ってんだよ、この人は」


課長の声が後ろから降って来る。


その声が、今にも泣きそうで、でも、嬉しそうで……。


「俺が勝手なのは間違いなくこの人の血だな」

「うん。そうだね」

「ひどいな。でも、思い出したよ。
父さんのこの目の輝きは死ぬ直前まで失われなかったことを……。
俺も父さんに負けられないな。ありがとう、愛」


課長が私を後ろからそっと抱き締める。


「ドイツにも桜があるから、一緒に見ないか。そして、夏には……」

「夏は日本で花火がいいな」

「いいね。じゃ、その頃には帰国するよ。で、秋には……」

「京都!行ったことがないの。一度は行ってみたい」

「おいこら。日本ばかりじゃないか。
じゃ、せめてスキーくらいはスウェーデンとか……」

「長野とかじゃだめ?行ったことないし」

「やっぱり、日本なんだ……。
まっ、いいか。
じゃ、俺たちの子供たちにも教えられるように愛は特訓だな」

「えっ?」


振り返って聞き返す私に、課長が真っ赤になって目を逸らす。


「聞き返すなよ」

「でも、今……私たちの子供達って……」

「プロポーズのつもりなんだけど。返事は?」

「課長……」

涙で声が出なくなる……。