課長さんはイジワル2

画面がぱっと変わって現地のスタッフらしい人のコメントに映る。


『サクマのお蔭で、我々は水を汲みに20キロも往復しなくて済むようになりました。
この子が産まれたとき、きれいな産湯につかることが出来ました。
この『カナメ』のお蔭です』



「『カナメ』?」


課長が訝しそうに画面に見入る。


カメラが課長のお父さんと背後にある井戸を映し出す。


『実は、日本に残してきた僕の息子の名前なんです。
お恥ずかしいことながら、僕があまりにも要、要というものだから、現地の人たちがこの井戸の名前を”カナメ”と名付けてしまって……いや、照れますね』


それから、カメラは引いて世界地図が映し出される。

そして、大陸の至る所に作られた井戸を点で表示し、それらを線で繋いでいく。

最初はひとつの井戸だった。

だけど、やがて年数を経るごとに点が増え、沢山の線で結ばれていく。

それらの線は、『カナメライン』と呼ばれて今もその線は、多くの人たちの手によって繋がれている。


そして、今では、それらの井戸を掘る事業は『カナメプロジェクト』と呼ばれ、その技術と共に大陸全土に広がりを見せているとのナレーションで締め括られる。



最後に、ナレーターは佐久間課長のお父さんが病に倒れ、亡くなったことを伝える。


カナメプロジェクトのスタッフの一人が、アップになる。


『『カナメ』は今では私達には無くてはならないライフラインです。
これを作ってくれたサクマにありがとうと言いたい』

沢山の村や町の人たちの感謝の言葉と共に、笑顔が映像でリレーされていく。

そして、最後に生前の課長のお父さんの映像が流れる。


『生まれてきてよかったとみんなに思ってもらいたいんです。
僕は命の全てを賭けて、死ぬまでこの償い続けたいと思います。
息子には、淋しい思いをさせてしまっていますが、僕は、もうこういう生き方しかできない。すまない、要』


課長のお父さんが太陽の下でまぶしそうに瞳を輝かせる。