課長さんはイジワル2

笑って、涙が出て、そんな私の涙を課長がそっと指でなぞる。


「この頃……」

「えっ?」

「あ、いや、何でもない」

「なんか言いかけた、課長」

「何でもないよ」

「気になる。言いかけたまま、またドイツに行っちゃうつもり?」


抗議に口を尖らせる私の口を課長がぶにゅっと指でつまむ。


「分かったよ。この頃、ふと思うんだ。父さんは幸せだったのかなって……」

「課長……」

「死ぬまでずっとこの天井だけを無表情に見つめていたから。
最期まで一言も言葉を交わせなかったまま逝った父さんがどんな思いでいたのかなんて皆目わかるはずもないけど……。
今だったら、今の医療技術と新薬があれば、少しは延命出来て、話とかも出来たのかな……」

「課長……」

「なんて、今更だけど」

「やっぱり、課長はお父さんが好きなんだね」

「……さぁ、わかんないな。そんなことも分からないうちに逝ってしまったから」


課長の顔を見ながら、ふと5年前のことを思い出す。

そうだ!

そうだった!