「がんばれーーー!愛ちゃん!!」

押尾さんたちの声援を背に、私は駐車場を目指した。

そして、安田から借りた車に乗り込むとちらっと時計を見る。

そう言えば課長のフライトの時間とか、吉田さんから聞いてなかった。

聞いておくべきだった。

もしかしたら、浜松町に行くよりも羽田空港に行った方がいいのかもしれない。

アクセルを踏み込みながら、額に汗が滲む。

ケータイはさっき落とした時に壊れてしまった。

通話は愚か、メールすら出来なくなってる。

どうしよう……。
すれ違ってしまうかもしれない。

不吉な予感に胸が押し潰されそうになる。


運転しながら、いつの間にか額を伝う汗を慌てて手で拭う。

赤信号に車を停めると、多くの人たちが目の前の横断歩道をゆったりと歩いて渡っていく。


『運転免許、取らないか?』

あの時の課長の言葉が蘇る。


『……冗談でしょう?』

絶対、運転なんて無理だと思った。

その私が今、こうやって運転して課長を追い駆けてる。

「はぁ……っ……」

運転席に深く寄り掛かり深呼吸する。