「……安田?」


な、何?

すごい音!


扉を開け奥へと足を進めると、安田が目を瞑り、片足を組んで椅子に座ってる。

テレビのボリュームをいっぱいに引き上げて、瞑想しながら集中してる。

いつから始めたのか忘れたけど、瞑想は安田の戦闘に入る前の儀式だ。

でも、こんなにピリピリしている彼を見るのは初めてかも。

私も椅子を引き、安田の前に腰を下ろす。

安田の長いまつ毛がピクピク小刻みに震えてる。



『佐久間に義理立てすることなんてないって。
愛ちゃんも気づいてるんだろ?安田の気持ち』



……気づいてた。



安田がどんなに私のこと、大切にしてくれているかも。

そして、どんなに深く愛してくれてるかも。



5年前……。


『愛を頼む』


課長からのメールを読んだという安田から何度もメールと着信があった。


辛うじて携帯に出た私が唯一言えた言葉は、

『課長…………いなくなっちゃった』

だけだった。