暗闇だった地平線にオレンジの光が伸びて広がっていく。


オレンジ色はやがてまばゆいばかりの光へと変わり、ビルの窓に、白壁に反射している様子を、私は手を翳し目を細めながらじっと見ていた。



「まぶしい……」



窓際に立ち、肩に軽くカーディガンをかけると、白い息を吐きながら腕をさする。





課長が私の目の前から姿を消して5度目の冬が訪れようとしていた。


このマンションの窓から何度この朝焼けを見てきたことだろう。



足の手術を終え、NYから戻ってきたとき、課長と二人で暮らしたこのマンションの名義は私に書き換えられていて、マンションの課長の荷物は既に引き払われていた。


まるで、初めから課長がこの世に存在していなかったかのように……


全てが私の目の前から無くなっていた。




失望に膝をつき、号泣したのがまるで昨日のことのよう……。



それでも、この5年間。



自分に言い聞かせてがんばってきた。



前へ。
前へ。
前へ。



課長が導いてくれたこの道を、私は独り、歩いていくんだ。

手術ですっかり元に戻ったこの足で地面を踏みしめて……。

朝の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、震える息で吐き出す。