課長さんはイジワル2

課長が驚いてる。


「か……」


課長の頬に手を伸ばそうとした瞬間、

「ブラーーーボーーー!!」

「オオオーーーー!!」

「オーーーマイっ!!」

大きな歓声に驚き、周りを見渡す。


幾重にもなった人垣の中から歓声と拍手が沸き起こり、乱れ飛ぶドル紙幣やコインがベンチ脇に置かれた箱の中に吸い込まれていく。


私と課長はキョトンとして顔を見合わせる。



「ぷっ!すごいな。仔猫の箱がドル箱に変身した」



課長がお腹を抱えて笑う。

鳴りやまない拍手の中、ぎこちないレヴェランスで答えるとより一層大きな歓声が湧き上がる。


「行くよ」

「えっ?!」

「その足じゃ、アンコールなんて無理だろ?」


課長は屈みこむと私を抱き抱え、「ダンケ!」なんて観衆にウィンクしながら箱を私に持たせてスタスタとその場を後にする。


「あの……課長……」

「なに?」

「足の手術、受けるよ。で、50年ローンとかで払うから。
一生、課長のそばで払い続けるから。
だから……」

「その50年の間、俺に生き続けろって?」


コクンと私は頷く。