でも、まぁ、そんなところも可愛いなって思うんだけど……。

課長の胸に顔を埋めながら、目をつぶる。


「ただいま」

「お帰り」


ようやく深く深呼吸できる。

もう少しだけ課長の腕の中にいたいと思うのに課長が不意に腕を解く。


「課長?」

「お腹すいた。何か食べに行こう」

「……」


課長の後に続こうとしたけど、なんだかいつもと違う課長の様子に彼の後ろからしがみ付く。

課長はずっと変だった。

私がNYから離れるあの日も雨に打たれてて……。

私自身、もうこのままでいるのが限界だと思った。


「どうした?」

「課長、何かあった?」

「何かって?」

「……課長、さっきから私の目を見ようとしない」

「愛……」


しがみ付く私の手に課長の手がそっと添えられる。

私は勇気を振り絞って、辛うじて声に質問を乗せる。


「ALS……どうだったの?」


課長が驚いて振り返る。


「愛、知って……」

「知ってた。ずっと、聞くの怖くて……ごめんね」


課長が首を横に振る。

何度も

何度も

首を横に振って

そして、強く私を抱き締める。


「ごめん、愛」


課長の声が小さく震える。