「びっくりした。いつ戻ってきた?」


課長の手が優しく私の髪を梳く。



「今……」



答えながら思い切り課長の胸に頬ずりする。

帰ってきた。

帰ってきたかった場所に。


「連絡もないから……驚いたよ」

「ごめ……」


謝ろうと顔を上げると同時に、課長に唇を奪われる。



「……んっ……」



謝罪の言葉が吐息に変わる。


課長にしがみ付き、私たちは何度も何度もキスを交わす。

何度目かのキスの後で、ようやく解放された私は課長のみぞおちに軽くパンチを食らわす。


「探した!マンションにいないんだもん」

「ごめん。昨日、あそこのベンチに仔猫がいてさ。
今日もいるんじゃないかって思って、エサをやりに来たんだ」

「仔猫?」

「うん。でも、誰かが拾ってったみたいでいなかったから、鳩にエサやってた」


課長がベンチの袂に置かれた空っぽの箱を指差す。

私はぷーーっと吹き出す。

課長ってば可愛い!


「まさかそのパンを上げるつもりだったの?」

「うん。ダメ?」

「ダメだよ!課長ってば、ネコ飼ったことないでしょ?
そんなに小さな仔猫だったらミルクとかじゃないと飲めないよ」

「えっ?そうなんだ」


普段はばっちりのリサーチ力を誇るくせに、時々こんな風に抜けてておかしい。