帰りの飛行機の中。

眼下に広がるNYの街を見ながら、ふっと溜め息を落とす。

喘息の発作が出てしまって、結局、ノリとおばあちゃんにちゃんとお焼香を上げることが出来なかった。

ホント、何しに日本に帰ったんだろう……。

情けない自分に泣きたくなってくる。

でも、NYの地を踏めば、一刻も早く課長の元へと心が飛ぶ。

もどかしい思いでスーツケースを引き、課長の待つマンションへと急ぐ。

空港を出てから1時間。

マンションに到着し、部屋に入る。


「ただいまぁ」



返事がない。




部屋という部屋を探したけど、課長の姿がどこにもない。


「どこに行ったのよ?」


お昼にはちょっと早いし……。

課長は以前このマンションに住んでいたから可動範囲が広過ぎて、こんな風にいなくなってしまうとどこに行ってしまったのか見当もつかない。


でも、あそこにいるような気がした。


たぶん、あそこだ。

急いでマンションを出て、近くの公園へと急ぐ。



公園のベンチに腰かけ、黒のダウンコートを着た男の人が鳩にパンをちぎってあげているのが目に飛び込んでくる。



いた!



「課長!」

「愛!?」


私に気づいた課長がベンチから立ち上がり、私の元へと駆け寄って来る。

私は迷いもなく課長の胸に飛び込む。