病院を出て、4年半ぶりに我が家に戻る。

台所の料理の匂い。

古くからある家の持つ独特の匂い。

すべてが懐かしい。

じぃちゃんもばぁちゃんも何も言わずに温かく迎え入れてくれる。

その晩は、久し振りに家族で円卓を囲む。


「田舎料理やけん、都会モンになった愛の口には合わんかもしれんけど……」


ばぁちゃんがグツグツと音を立てる鍋の向こう側で、具をお椀に注ぐと私に手渡す。


「ぎょぉさん食いんしゃい。お!そういや、愛は今、何歳ね?」


じぃちゃんが蔵から出したばかりの一升瓶を片手に私に尋ねる。


「23ばってん?」

「そがんなるね?早かね……。じゃ、もう酒は飲めったいね」


じぃちゃんが嬉しそうに私の分のお猪口を用意する。


「そういえば、与作兄ちゃんがおらんようやけど……?」


とぉちゃんとかぁちゃんが、顔を見合わせニヤリと笑う。


「ついにいい人ができたごたぁよ」

「ええっ?!あの与作兄ちゃんにね?」

「『あの』とは聞き捨てならんたい」


背後からの声に慌てて振り返る。


「与作兄ちゃん!お帰りなさい!」

「バカ。そりゃ、こっちのセリフたい。お帰り、愛。元気にしとったか?」

「うん!」