そして、次に目を開けたときには、心配そうなとぉちゃんとかぁちゃんがド派手な黒のタキシードと超キラッキラな紫のドレスに身を包んで私を覗き込んでた。


「大丈夫か?愛!」

「愛?!大丈夫ね?」

「とぉちゃん……。かぁちゃん……どうしたの?」

「どがんしたも、こがんしたもなかやろがっ!
喘息てなんね?!聞いとらんばい!そがん病気ばしとったとは!!」


やばっ、バレてる。

心配掛けたくなくて、喘息のことは課長と安田しか知らなかったんだけど。


「ごめん。そのことはまた今度……」


そう言えば、安田の姿が見えない。

一緒に救急車に乗り込んだはずなのに……。


「かぁちゃん、ここに一緒に来た『安田』って人、知らない?」

「ああ、あのイケメン坊や?帰りの新幹線があるからゆうたから、田吾作が送ってったばい」

「えっ?!田吾作兄ちゃんがっ!?」


慌てて起き上がるけど、酸素不足の影響か眩暈がひどく再びベッドに体を戻す。


「まぁ、田吾作は見境のなく襲うタイプじゃなかけん大丈夫たい。……多分」


かぁちゃんも自信なさそう~に視線をそらしつつ答える。


ああ……。

安田、ごめん。

今頃、田吾作兄ちゃんの餌食になってないといいけど……。


不安に思いつつ、メールを送ろうとケータイに手を伸ばす。


あれ?

なんか、メールが来てる。


安田からだ!


「今から新幹線に乗るよ。早く直して今度は東京で会おう。
これからもいい友達として」


安田……。ありがとう。


ほっとして、ケータイを抱き締め目を閉じると、安田の優しさが目に滲みて、何度も涙を手の甲で拭った。