「おばちゃん、うちの足のことは心配せんでも大丈夫やけん、気にせんで?

ノリは……おばちゃんのこともおばあちゃんのことも大好きやったよ?

それにね、ノリはおばちゃんが大変だろうと何だろうと『2年後』には絶対東京に行くってゆうとった。

おばちゃんが引き止めたから、いやいやここにおったとじゃなか。

ノリは自分の意志で、おばちゃんとおばあちゃんが好きやったから、ここにおったとよ。

だから、ここにノリがおったとも、事故の遭うたともおばちゃんのせいじゃなかよ」


「愛ちゃん……」


「私も、おばちゃんも、忘れることなんてできんとやから……話そ?ノリのこと。

いっぱい思い出してあげよ?

『私たちのことば置いてって、ひどかーーー』って言ってやろ?

そしたら、ノリのことやけん、きっと『しゃーんなかやろうが!』って天国で笑ってくれると思う」



「愛ちゃん……。ありがとう。そうたいね。あの子じゃったらそがんいいそうたいね」



泣きながらもおばちゃんの顔に仄かに笑顔が戻る。



忘れる必要なんかない。

忘れようと思えば思うほど、忘れられない……

だから、無理して忘れなくてもいいんだと課長が教えてくれた。


あの日、課長が私の心ごとそっと抱きしめてくれた。

だから、こんなに離れている今でもはっきりと課長の存在を感じる。

温かい課長の腕が、今もしっかりと私を抱きしめてくれて、支えてくれてる。