翌朝、帰国の準備を整えて課長のベッドの脇に跪く。

日本に帰国してももうノリのおばあちゃんの通夜も告別式も終わってる。

だけどこの機会を逃したら、私はもう永遠に太っ腹町には足を踏み入れることが出来ないような気がする。

課長が前へ進むように、私も前に進みたい。

「ごめんね、課長。行ってきます」

穏やかな寝息をたてる課長のおでこにそぉ~っと手を伸ばす。

良かった。

熱は下がったみたい。

ほっとして手を下げようとしたとき、その手を不意に課長に掴まれる。

「行くの?」

「……うん。ごめんね」

「なんで、ごめん?」

「えっ?」

「帰ってこないつもり?」

「なんでそんな風に思うの?」

「なんとなく」

「……ばか」


課長の手を握り返し、唇を寄せる。