「吉田さん、どういうこと?!課長に……」
吉田さんがケータイのアドレス画面を検索しながら、私の質問に答える。
「中学の時に親父さんが病気で亡くなって……
おふくろさんも5年位前かな?
ガンで亡くなったって聞いた。
あいつ、一人っ子だったし、おふくろさんの葬式の後、
『ついに天涯孤独になっちゃったな』
って笑ってて……。
それで……あ、もしもし、社長秘書室ですか?」
吉田さんが「ごめん」と目配せし、電話をしながら外に出て行く。
知らなかった。
課長は何も言ってくれなかったから……。
なんで、言ってくれなかったの?
……ううん。
違う。
私が……言わせなかったんだ。
自分を憐れむのに精一杯で……。
吉田さんがケータイのアドレス画面を検索しながら、私の質問に答える。
「中学の時に親父さんが病気で亡くなって……
おふくろさんも5年位前かな?
ガンで亡くなったって聞いた。
あいつ、一人っ子だったし、おふくろさんの葬式の後、
『ついに天涯孤独になっちゃったな』
って笑ってて……。
それで……あ、もしもし、社長秘書室ですか?」
吉田さんが「ごめん」と目配せし、電話をしながら外に出て行く。
知らなかった。
課長は何も言ってくれなかったから……。
なんで、言ってくれなかったの?
……ううん。
違う。
私が……言わせなかったんだ。
自分を憐れむのに精一杯で……。

