だから、嘘をついた。

 強さという幻覚の影に隠れて、生きてきた。

 たとえ恐れられていたとしても、『私』の存在がちゃんとあった。


 でも、所詮は幻覚だった。

 弱い私はちっとも変わらない。



「若葉くんに出会って、正直言って救われたよ。言葉のひとつひとつが、優しくて、温かくて」



 虚ろな心に、じんわりと沁み込んできた。

 それは、長い間願ってやまなかったもの。



「仲良くしてくれて嬉しかった。たくさん話してくれて、嬉しかった。……一緒にいて、楽しかった」



 若葉くんといることが『楽』じゃなく『楽しかった』――それだけで、大きな意味を持つ。

 だから私は、持てる力のすべてを込めて笑う。



「感謝してもしきれないくらい。本当にありがとう」



 ……私のために誰かが傷つくのは嫌。

 それが、私の心配をしてくれる人なら、尚更。