夕暮れの光が、優しくあたたかい。


 だけど、空っぽな心には過ぎたものだった。


 めったに人が通ることのない体育館裏。

 何かをする気にもなれず、私は帰り支度をしたまま、竹刀と膝を抱えてうずくまっていた。


 下校時間はとっくに過ぎている。

 明らかな不当居残りだ。


 先生たちに見つかりたくないからって、改修中の立ち入り禁止区域に居座ってる。

 剣道場に向かうのを途中放棄したから、靴に履き替えないで上履きのままだし、本当にバカだ、私。


 ……昼休み以来、若葉くんと一度も話していない。

 彼から話しかけてくることもなかった。



「ははっ、嫌われてるなぁ……」



 ずっと傍にいたから、近すぎたから、遠いことがこんなにも辛い……。