朝会えば、「おはよう」って言ってくれる。

 休み時間は、気さくな笑顔で話しかけてきてくれる。

 放課後は、部活へ行く私にエールを送ってくれる。


 でもそれは、若葉くんの1日のよりすぐりに過ぎない。


 たとえば朝、私に挨拶をする前、彼は1人で登校している。

 休み時間に何の繕いもなく会話ができるのは、素で話せる2人の間だけ。

 そして放課後、私を応援してくれた後は部活生の脇をすり抜け、1人で校門を出る。


 この数日間、彼に近づいて行った人は1人もいなかった。

 彼も誰にも近寄ろうとはしなかった。


 そのどちらも、私を除いては。


 ……そんなことに、今更気づいた。