花の下に死す

 「残念ではあるが、鳥羽院という絶対的権力者の前では、私は無力。待賢門院さまをお救い申し上げることはできない」


 義清は無念そうに月を見上げた。


 「ただ……」


 「ただ?」


 「待賢門院さまをこうしてお救いしたいと願う者がここにいることを、是が非でも知っていただきたい」


 「義清どの、それは」


 直接会って想いを遂げたいと願っているのかと、堀河は察した。


 「私のこの切ないまでの想いを、待賢門院さまに知っていただけたら……」


 「露見すれば、ただでは済まないと知っていても……でしょうか」


 「自分でも不思議だと思う。たった一度だけ、御簾の隙間から垣間見ただけなのに、これほど想いが募るものとは」


 「……」


 堀河は黙って義清を見つめていた。


 武士という身分であり、十歳近くも年下なのにもかかわらず、貴族の家で最高級の教育を受けた自分と遜色なく受け答えができる。


 礼節もわきまえていた。


 それだけでも特筆すべきものだったのに……見目麗しい男。


 気がつけば堀河は、若い情熱に引きずられていた。