その後清盛と別れ、義清は自宅に戻った。


 「お帰りなさいませ」


 「父上、お帰りなさいませー」


 屋敷に戻ると、妻ともうすぐ三歳の娘が迎えに出て来てくれた。


 「ただいま」


 そう答えて義清は、娘を抱き上げた。


 義清によく似た、可愛い娘……。


 「殿、夕食(ゆうげ)の仕度ができております」


 いつも優しい妻。


 「よし、夕食の後は、庭の桜を愛でながら酒だ」


 「はい!」


 穏かな家庭だった。


 いつまでもこんな幸せが続くものだと、誰もが信じてやまなかった。


 義清はやがて自らの手で、この幸せを壊してしまうことになろうとは……予想だにしていないことだった。