｢お前も俺の出生にまつわる噂を耳にしているのだろう？　義清｣


　｢ああ。どこからともなく……な｣


　ごまかせる雰囲気ではなかったので、義清はありのままを答えた。


　｢俺の生みの母はかつて御所に仕えていた頃、白河院の手がついた。だがすぐに飽きた白河院は、母を父に押し付けた｣


　｢……｣


　｢父は院の手がついた女を、ありがたく頂戴するしかなかった。そして程なく俺が誕生したわけだが、結婚から出産までが早すぎるとして、周囲の様々な憶測を呼んだわけだ｣


　｢お前は……。それについてどう感じているのだ｣


　もしも自分がそんな星の下に生まれていたとしたら。


　自らに課せられた運命を憎むあまりやけになり、自堕落な日々を送っていたかもしれない、義清はふとそんなことを考えた。


　｢悩んでも、どうすることもできないし。父上が俺を嫡男と遇してくれている以上、それが真実だと思って毎日を過ごしている｣


　｢そうか……｣


　義清は清盛の割り切りのよさを、羨ましく感じた。