「清盛の父・平忠盛どのも白河院から、女を一人頂戴したらしい。そしてその女は程なくして、清盛を産んだ……」


 「……」


 日本では古来、権力者が(飽きた)女を家臣に下げ渡す習慣があった。


 家臣にとってそれは主君の信頼の証、むしろ名誉なことだったのだ。


 古くは天智天皇が、忠臣の中臣鎌足に自分の妃の一人を下げ渡した……という例もある。


 「まさか清盛が、白河院の御落胤……」


 義清は同僚の言葉を未だに信じかねていた。


 「清盛の早すぎる出世、そして白河院の治世以降の平家の躍進。全ては説明がつくだろう?」


 「清盛は知っているのか?」


 「家の者が隠していても、世間ではかなり噂になっていることだ。知らないはずはないだろう」


 ……この夜義清は、多くの衝撃の事実を知ってしまった。


 知りたくなかったこと。


 いや、知らないわけにはいかなかったことも。