――――ふわ、


と頭を撫でられる感覚で、目が覚めた。



ぼんやりと瞼を開けると、本が散らばった床が目に入る。


それで、ああ、先生の部屋だ、と分かった。



帰ろうとしたら止められて、後ろから抱きしめられて、そのまま、いつの間にか眠ってしまったのだ。



背中には先生の気配がある。


なんとなく動けずにいると、先生はもう一度うしろから手を伸ばしてきた。


はじめは私の額のあたり、次に耳の上あたりを、ゆるゆると撫でている。



その撫で方があまりに優しいので、耐えきれなくなって、私はくるりと後ろを向いた。




「………おはようございます」




少し視線を逸らしてそう言うと、先生がふふっと笑みを洩らした。




「おはよ。ちゃんと眠れた?」




目を上げると、溢れかえる朝の光の中で、優しい眼差しが私を見つめていた。



その顔を見た瞬間ーーー張り詰めていた水滴がぽとりと地面に落ちるように、ふいに思った。




………私、この人が好きなんだ。