特別って、どういうことだろう。


今までの男とは違う………そんなの、最初からそうだった。


こんな人、会ったこともなかったから。




ーーーいとおしい。


抱きしめたい。




甘い声で囁かれた先生の言葉が、私の頭の中をぐるぐると回る。



抱きしめたいというのが、欲を意味していないことくらい、先生の口調を聞いていれば明らかだった。




そんなことを言ってきた男は、今までいなかった。



何もかもが違う………今までとは。



先生の言動も、私の反応も。




「俺のこと、今までとは違うって、特別だって、思ってくれてるなら………君が俺のこと、少しは好きでいてくれるって、思ってもいいよね」



「…………」




私は目を閉じて寝たふりをした。



それでも先生は、構わずに言葉を続ける。




「智恵子………好きだよ。

君も俺のこと好きになってくれたら、とても嬉しい………」




『好き』という言葉ーーー何度言われてきただろう。



そう言われたら、私はいつも、妖艶な笑みを浮かべていた。



それなのに今はーーーなぜか、涙が溢れそうだ。




「早く俺のこと好きになって………」




先生はうわ言のように繰り返しながら、眠りに沈んでいった。