ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

呆れたように笑いながら、先生を近くのベンチに座らせる。




「なんだっけ?

『彼女に俺のこと好きになってもらうにはどうすればいい?』

……とか何とか、ぐちぐち言ってな」



「10回くらいは同じこと言ってたよな」




え、と私は動きを止めて、彼らのほうを見た。



にんまりと笑った5人の顔。




「…….…てことで、どうか光太をよろしくお願いしますよ、智恵さん」



「だらしないろくでなしだけど、いい奴だから」



「自分で言ってたけど、智恵さんに首ったけらしいですよ」



「こいつ、ロマンチストだからさ。

ずうっと昔から、『運命の恋人』を探してたんですよ」



「智恵さんがその運命の恋人なんだって」



「情が深いやつだから、一度この女って決めたら、裏切ることはないと保証します」




私は何も言葉にならず、ただ頷く。




「こいつ、『真実の愛を求めて彷徨う旅人』だったんですよ。

だから智恵さん、こいつに、『真実の愛』ってやつ、教えてやってください」




最後にそう言って、たまたま通りかかったタクシーを私たちのために止めると、彼らは立ち去っていった。