ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

先生はあっという間に5人に囲まれた。



たぶん、同窓会で一緒に飲んでいた仲間なのだろう。



そんなことを考えながら、先生の後ろ、少し離れたところで見ていると、その視線を感じたのか、一人がこちらに目を向けた。


驚いたように目をみはり、それから隣に立つ男の肩をつついて私の存在を知らせる。



私はとりあえず、いつものくせで営業スマイルで応えた。




「えーと、あなたは……光太のお知り合いですか?」



「ええ、そうです。はじめまして。

朝比奈先生の担当をしております、香月智恵です」



「あ、なるほど、そうでしたか。

光太がお世話になってます」



「いえ、こちらこそ、先生にはお世話に」




そんな会話をしていると、横から突然、先生ががばっと抱きついてきた。


びっくりして言葉を呑み込み、頬が触れあうほど近くにある先生の顔を見る。



酔いのせいなのか、じっとりと目が据わっていた。




「ちょっとー、お前ら、智恵子に手え出すなよー?

智恵子は俺のファム・ファタールなんだからなー」