ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

顔から火が出そうだ。


先生といるところを同僚に見られるなんて、恥ずかしすぎる。




「……佐野さん、もう行こう。

返りが遅くなっちゃうし」




とにかくこのば場をなんとかしたくてそう言うと、佐野さんたちは「いえいえ」と手を振った。




「ていうか、あたしたち、お邪魔ですよね」



「え? そんなこと……」



「香月さんは朝比奈先生と帰られますよね?」



「じゃあ、あたしたち、ここで」



「香月さん、今日はお付き合いいただいてありがとうございました。また明日」



「朝比奈先生、今後とも真栄社をどうぞよろしくお願いします」




佐野さんたちは、私が止める間もなく話を進めてしまった。



正直、いま先生と二人きりになるのは気まずくて仕方がない。




「ちょ、ちょっと待って、みんな……」




立ち去りかけた彼女たちの後を追うと、佐野さんがにっこりと笑って振り向いた。




「―――朝比奈先生だったんですね。

香月さんが変わった原因って。


本当にお似合いだと思いますよ。

末永くお幸せに!」




そんな捨て台詞を残して、彼女たちは軽やかに去っていった。