新しく淹れてもらったコーヒーを一口飲んでカップをテーブルに置くと、佐野さんが口を開いた。




「あの………香月さん、もし今晩ご予定がなければ、夕食をご一緒しませんか?」




「えっ」




私は驚きのあまり思わず小さく叫んでしまった。


男からの誘いなら数知れず、

でも、女の子から食事に誘われたのは初めてだったのだ。




「予定はないけど………いいの?」




窺うように訊ね返してしまう。


ああ、私らしくない。



佐野さんたちはにこりと微笑んだ。




「こちらこそ、香月さんとご一緒できるなんて、すごく光栄です」



「…………」




すぐには言葉を返せなかった。



なんと表現すればいいか分からない、とても複雑な気分だ。




「………これまでずいぶんきつい当たり方ばっかりしてたのに………私なんかと食事しても、きっと楽しくないわよ?」



「そんな………確かに香月さんは厳しいですけど」




佐野さんが言うと、ほかの二人も小さく笑った。




「はい、厳しいですけど」



「正しいことをおっしゃるから」