ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「御託はいいから、私が別れるって言ったら、すんなり別れなさいよね。

それが男の引き際ってもんでしょ。


これ以上すがられたって、めんどくさいだけ。

あんたがそうすればするほど、私はどんどんあんたのこと嫌いになるわ。

今すでに、顔も見たくないくらい嫌いよ。


………往生際が悪いのよ、佐竹くん?」




にっこりと妖艶な作り笑いを浮かべて、私は「じゃあね、また会う日まで」と手を振った。



私の言葉に顔をしかめはしたものの、それ以上何も言わずに静かに帰っていったところは、前彼よりは品があるわね。


あれ? 前々彼だっけ?



とにかく、同じようにこのバーのカウンターで別れ話をした、あの下品で野卑な男。


あいつよりはマシだ。




「マスター、ジャック・ローズを」




何事もなかったかのように微笑んでオーダーすると、マスターも何食わぬ顔で頷いた。


なかなかスマートな男ね。