ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「というか、智恵子ってさ」




先生が声のトーンを変えた。




「はい?」



「あんまり笑わないっていうか、表情がころころ変わるよね。

怒った顔もするし、ふと笑うこともあるし、急に色っぽい顔もするし。

だから、見てて飽きないよ。


ずっと笑ってるよりも、目をひかれちゃう気がする」




衒いもなく言われて、なんとなく居たたまれなくなり、私は思わずうつむく。



そのとき、複数の足音が前のほうから聞こえてきた。


ちらりと見ると、飲み会を終えたらしいサラリーマンの集団が歩いてきている。



道をあけるように足を止めて、道の端に寄った、そのとき。




「………智恵?」




どこかで聞き覚えのある声に、ふいに名前を呼ばれて、私はそちらに目を向けた。



誰だろう、と目で探していると、集団の真ん中あたりにいたグレーのスーツの男が、私のほうに視線を向けているのに気づいた。