ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

心地よく楽しい食事の時間を終えて、店を出る。




「ごちそうさまでした、智恵子」



「いえ、こちらこそ、いい店を教えてただきました。

とてもおいしかったです」



「でしょ?」




先生は、まるで自分が褒められたかのように笑う。




「先生って、よく笑いますよね」



「そうかな。そうかも」



「私は、あんまり笑わないって、よく言われます」




だから怖い、と言われることは、あえて言わなかった。




「あんまり笑わない、か。そうかな?」



「そうですよ。自覚もありますし」



「でも、そのほうが笑顔にレア感があっていいんじゃない?」




そんな考え方もあるのか、と私は意表を突かれた。




「たまに笑顔が見れるときゅんとしちゃう、みたいな」



「なんか少女漫画みたいですね」



「いいじゃん、少女漫画。なんか、ピュアの玉手箱って感じで、俺はけっこう好きだよ」



「え? 少女漫画、読むんですか」



「たまにね。智恵子は読まない?」



「あんまり………」




学生の頃から、自分で買うのは小説がほとんどだったし、漫画を貸し借りするような友達もいなかったから、必然的に読む機会がなかった。