ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

金曜日でもない平日の居酒屋は、ほどよく空いていて居心地がいい。



注文をしながら、また一つ発見した。




「俺たち、食べ物の趣味が合うね」



「本当に」




私が『おいしそう』と思っていたものを先生が先に注文したり、

私が頼んだ料理を見て、先生が「俺もそれ頼もうと思ってた」と言ったり。



まあ、女たらしの朝比奈先生のことだから、わざとそう言ったのかもしれないけど。


でも、食事の好みが合うというのは、なんとなく嬉しくなる。



飲んだり食べたりしながら、今まで読んだ小説の感想を言い合ったり、

相手の知らない作品を薦めてみたり、

話は尽きなかった。




楽しいな、とふいに思って、そんな自分にびっくりする。


男と一緒にいて、『楽しい』と感じたことなんて、なかった。



いつも、どうやって相手を自分に夢中にさせるか、ということばかり考えていたから。


こんなふうに純粋に楽しめる食事は初めてだった。