ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

二人分の本をまとめて精算して、先生がずっしりと重い紙袋を受け取る。



破れ防止のために、紙袋は二重にしてあった。




「ありがとうございます、先生」



「どういたしまして。って、智恵子は食事代も映画代も払ってくれたけどね」




あはは、と先生が笑う。




「そのうち返すから、待っててね」



「いえ、あれくらい返さなくてもいいですよ」



「あ、出世払いってやつ?」



「出世はしなくて結構ですので、新作執筆払いをしてください」



「おお、手厳しいなあ」




私の嫌味をものともせず、先生はからからと笑っている。



こんなに嫌味の言い甲斐のない人は初めてだ。




「お腹すいたな。晩ご飯いこうか」



「私のおごりですけどね」



「よろしくお願いします」




やっぱり先生はのほほんと微笑んだだけだった。