ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「智恵子が読みたいときに読んでいいよ。

君が先に読んだっていいし。

俺、こんだけ買ったから、後回しになるしね」



「ありがとうございます」



「それに、読み返したくなったら、いつでも俺の部屋から持っていっていいから」




頭を下げてお礼を言いながら、すこし疑問に思う。


『いつでも部屋から持っていっていいし』って、もし別れたらどうするつもりなんだろう?


まあ、そのときは私が自分で買い直せばいいんだけど。



このひとは、別れた時はどうしよう、とかって考えないのかな。



そんなやりとりをしているうちに、レジの順番がきた。


私が鞄から財布をとりだそうとすると、その手を先生がとめる。



怪訝に思って顔を上げると、先生がにっと笑った。




「ここは俺に払わせてよ」




私は驚いて目を丸くする。




「え? でも、先生、現金もってないじゃないですか」