ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「智恵子はなに買うの?

ちょっと見ていい?」




先生が手元を覗き込んできたので、私は見やすいように背表紙のほうを向ける。




「あ、これとこれ、俺も選んだよ」




私が5冊えらんだうちの2冊を、先生が指で示した。


それから自分のカゴの中を私に見せる。




「あ、ほんとだ。かぶりましたね」



「もったいないから、それは返してこようか。

俺のやつ、読めばいいよ」



「えっ」




思わず先生をじっと見上げる。



誰かと本の貸し借りをするなんて、初めてだった。


今まで付き合った中に趣味の合う男なんていなかったし、

私には女友達もいないから。




「あれ? もしかして、ひとの本を借りるのは嫌ってタイプ?

それか、読んだ本は手元に置いときたいとか」



「いえ、そんなことないです。

じゃあ、お言葉に甘えて」