ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛








カフェを出たあと、せっかくだから夕食も食べていこう、と先生が言った。



私は男と朝から晩まで一緒にいたことなんてなかったけど、先生といるのはあんまり苦にならなかったので、別にいいかと思って了承した。



夕食までには時間があったので、ぶらぶらと街を歩く。


大きな本屋を見つけると、先生は目を輝かせて中に入った。



はじめに新刊の単行本のコーナーを物色して、次に文庫本のコーナーに移動する。


先生は新刊を中心に、気になるものがあれば中身をぱらぱらめくり、カゴの中に次々本を重ねていった。



私もいくつか目ぼしいものを見つけて手にとった。



気がついたら二時間近くが経っていた。


先生が私の隣に立ち、顔をのぞきこんでくる。




「そろそろ満足した? 智恵子」



「先生こそ。ずいぶんたくさん選びましたね」



「そうかな? いつもこんなもんだよ」




先生の部屋の惨状を思い出し、たしかに、と私は笑いをこらえた。