ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

でも、もう言ってしまった。


どうしよう、どうやってフォローしよう。


このままでは………



ぐるぐると考えを巡らせていると、ふいに先生が口許を綻ばせた。




「素敵? 嬉しいこと言ってくれるなあ。

でもまあ、智恵子はもっと素敵だけどね」




言葉通り、ただ単純に嬉しそうな表情で言われて、私は拍子抜けした。



先生が壁に掛けられている時計を見る。




「もうすっかり夜だね。

さあ、行こう」



「あ、はい」




必死に巡らせた考えを実行にうつすこともなく、私は先生の背中を追ってレジに向かった。



代金を払うと、先生は私に向かって、



「ごちそうさまでした」



と頭を下げる。



店員の若い女の子が、目を瞬かせて先生を見ていた。



先生には、羞恥心とかプライドとかはないんだろうか。


ふつうは、『女にお金を払わせるなんてみっともない』、『世間体が悪い』と考える男が多いと思うけど、

先生はそんなことはちっとも気にしていないようだ。



周りからどう見られているのか、気にならないんだろう。