ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

話し込んでいたら、いつの間にか、窓の外の街はすっかり夕闇に沈んでいた。




「もうこんな時間か」




私の視線に気がついたのか、先生も外に目を向けて、ぽつりと呟いた。



そのまま、頬杖をついてぼんやりと街を行き交う人々を眺めている。



私もぼんやりと、そのオレンジ色に染まった横顔を眺める。




そういえば、中身の非常識さばかりが気になって、あまり外見のほうをちゃんと見たことはなかったけど。



すっと通った鼻筋と、弧を描く眉、滑らかな目許から頬へのライン、すらりとした細い顎。



きれいな輪郭の横顔だ。




その横顔がおもむろに動いて先生がこちらに視線を戻したとき、

図らずも目を奪われたような形になっていたことに気づき、いたたまれなくて顔を俯けた。




「………もしかして、俺に見惚れてた?

なあんて、そんなわけないか」




くすりと笑いながら冗談めかして言われた言葉に図星をさされて、私は慌てて顔を上げる。




「ち、がいますよ。そんなわけ………」




とりつくろおうとした声はかすかに震え、頬が不自然に強張っているのが自分でも分かる。



それに気がついて、そんな自分が急に恥ずかしくなり、顔が熱くなるのを感じた。