ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「はい。なかなか面白かったと思いますけど」



「俺もそう思う」




先生がにっと笑って頷いた。




「あれはよかった。よく練られた展開でね。映画化はちょっと失敗だったね」



「ええ。テーマ的にも設定的にも、やっぱり映像化は無理がありましたよね」



「そうそう………」




それから、最近の海外文学全般の話になり、日本の翻訳文学の話になる。



私も知っている小説もいくつか名前が出てきたので、話が盛り上がった。




話しているうちに、先生と私は、文学の趣味や小説の読み方、批評の観点が似ているのが分かってくる。


好きな作家やお気に入りの作品は、かなりマニアックなものなのに一致していたりした。



すごく新鮮だし、単純に珍しくて、そして嬉しかった。



こんなに話が合う人は初めてだな、と思ったので、正直にそのことを告げてみる。



先生がにっこりと笑った。




「俺もだよ。

こんなに遠慮なく好きな小説の話ができたのって、初めてだな」