ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「アクションも中途半端でしたね」



「そうそう。あんな安っぽいアクションなら、むしろやらないほうがよかった。

ドンパチやれば観客が喜ぶと思って、とりあえず入れたって感じ」




先生は水の入ったグラスを片手でもてあそびながら、さらに続ける。




「映像もよくなかったね。

色使いが下品っていうかさ。

ストーリーもどこかのアカデミー賞作品の焼き回しだし、正直、褒めるところが見つからない」




遠慮のない批評を聞いて、顔には出さなかったものの、私はひどく驚いた。



先生が誰かに対して否定的なことを言ったり、マイナスな言葉を口にするのを聞いたことがなかったからだ。



いつも物腰が柔らかくて穏やかな印象だったので、かなり意外だった。



先生にこんな一面があったなんて、と思う。



でも、考えてみれば、当然だ。



私と先生が知り合ってから、まだ半年も経っていない。



最初の二回は、ただ同じバーに居合わせただけだし、仕事上の関わりを持つようになってからも、顔を合わせてじっくり話したのは片手で数えるほどしかないのだ。



私の知らない一面があっても当たり前か、と思った。