ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

「じゃあ、ポップコーンはやめて………飲み物だけでいいか」



「そうですね。お昼たべたばっかりですし」



「どうする、お酒のんじゃう?」



「いいですね、じゃあビールで」



「よし、俺もビールにしよう」




先生はにこやかにレジに向かった。




「ミックスナッツも頼もうか」



「あ、いいですね」




今まで気づかなかったけど、私たちは、食に対する好みだけは合うらしかった。



ビールの入った紙コップと、ナッツの紙皿を持って、目的の映画が上映されるスクリーンに向かった。




映画の開始を待つ間に、小さく乾杯をする。




「そういえば、智恵子と一緒に飲むのは二回目だね」



「え? そうですか? 初めてじゃ……」




首を傾げてから、私はふと思い出した。




「ああ、そうですね。

あのバーで二度目に会ったときに、二人で飲みましたね」



「そうそう」




先生が嬉しそうに笑う。




「君はとんでもなく冷たい顔で、男を振ってるところだった」




からかうように言われて、かちんとくる。




「先生は、とんでもなく情けない顔で泣きじゃくりながら女に振られてましたよね」