「英輔も面倒な嫁抱え込んだものだ。」
そんなセリフを善道さんから言われるとは思わなかった。
「それはそちらの世界の人間だからそう思うんでしょう?」
「だから 英輔はこれから大変だなって思うんだよ。
藤堂家は何を考えて君みたいな子を嫁に欲しがるんだろうな。」
「知りませんよ。そんなこと。」
祖父の遺言とは言えない。
家柄があまりにも違いすぎる。
こんな結婚させる意味ってあるのかな?
最近学校を休みがちでその度に伊澤家へ出向くことが英輔も柴崎さんも気に入らないのだと思う。
珍しくその日英輔が伊澤の家を訪ねた。
「やあ 英輔、どうしたんだ?」
「亜紀を迎えに来た。」
「毎回、時間になれば屋敷へ送り届けているだろう?
なのにここへ君が来るというのは常識外れじゃないのか?」
「今日は連れて帰る。
いくら友人からの誘いとは言え、こうも頻繁に呼び出すのは止めて欲しい。
亜紀は俺の婚約者だし、これから何かと屋敷内で忙しくなるんだ。
亜紀には遊ぶ暇はないんだよ。」
英輔が直接向かえに来たということは、もしかして父親に知れたのでは?
そうとしか考えられない。
英輔が私のために動くはずがない。
物陰に隠れて様子を伺っていた私だけど、善道さんに顔を出すように言われる。
しかたなく二人の前に顔を現すと英輔の表情が一変する。
「これはどういうことだ?!
藤堂家の嫁をメイド扱いしているのか?!」
そうだ、私は藤堂家の英輔の婚約者。
なのに、メイド服で現れたものだから英輔が立腹するのも無理はない。