眠たそうな顔をして目を手で擦り始めた沙紀。
そんな沙紀を抱っこしていったん会場を出て行く。
廊下へ出ると珍しくその場に似つかわしくない女の子がいた。
まだ二十歳かそのくらいの少女の様に見える女性だが、女の子と言う表現がよくあっている。
その女の子ももしかして親か兄弟に連れてこられた犠牲者か?
沙紀のお守り役で慣らされた俺はすっかり放置された女の子を放っておけなくなった。
「君、こんなところで一人でどうしたんだい?」
すると、恥ずかしそうに俯きながら小さな声で応えてくれた。
「初めて来たので緊張で気分が優れなくて。」
「だったら、君もおいで。休憩室を案内しよう。ここへはご両親と一緒に?
それならば僕の方から連絡を入れておくよ。」
「でも・・・」
急に現れた子ども連れの俺の言葉をいきなり信用しろっていうのは難しいかな?
だったら藤堂家の息子だと名乗るのが一番信用してもらえる。
けど、ここでさっきの兄貴の言葉が頭を過った。
『藤堂家の男にはいろんな女が群がってくる。』
そうなんだ、藤堂という名前を出すことはそれなりにリスクがある。
この女の子が藤堂家を狙っていないという保証はない。
「大丈夫、僕は藤堂英輔の知り合いなんだ。この子も一人じゃ寂しいだろうから、君も一緒においで。」
子どもが一緒だから安心したのかその女の子は頷いて俺と一緒に控室まで付いてきた。



