「残念ながら我が姫は今から私と踊る約束をしているんです。」
「そうなのよ。沙紀はね、叔父ちゃんの恋人なんだから。」
「おや、こんなに可愛い恋人がいるとは君も隅に置けないね。」
「では、また。」
沙紀から早く離れろ。
沙紀は藤堂家のプリンセスなんだ。
お前のような家の息子の嫁にさせられるか。
「いやいや、さすが俺の弟だ。こんなに沙紀のナイト役のはまり役はいないよな。」
「兄貴、いい加減沙紀のお守り役下ろさせてくれよ。
俺だって花嫁探ししたいんだよ。これじゃあ子持ちみたいで女が寄ってこないだろ。」
そうなんだ。
沙紀が俺に纏わりつくことで俺には女が寄ってこない。
なのに、妻帯者の兄貴には女が集ってくる。
これって違うだろ?!
世の女たちはどこに目をつけているんだ?
「なあ、どこかに良い女いないかな? 俺の嫁になってくれるようないい女が。」
「そうだな、難しいな。 藤堂家の男にはいろんな女が群がってくる。
その中から見極めなきゃいけないんだ。お前にも亜紀のような素敵な女が現れるのを祈ってるよ。」
義姉さんみたいな女か・・・
義姉は平凡な普通の女の人だ。そんな人を妻に望むのなら普通の家庭の娘を探せってことなのか?
たぶん、そう言う意味じゃないと思うが・・・
兄貴は義姉を信じているし、義姉だけを愛している。
俺にもそんな信じあえる愛し合える女と巡り合えるのだろうか?
「叔父ちゃん! 眠いよ・・・」
「さて、我がお姫様は父親より叔父ちゃんの方がいいのかな?」
「うん、パパはママのだから、叔父ちゃんは沙紀のだよ。」
「妬けるなぁ、広樹には。ということだ、広樹、後は頼んだぞ。」
父親が寝かしつけろよな。
俺は沙紀の父親じゃないんだぞ・・・・
とは言っても、沙紀の寝顔を見ていると天国気分だ。
叔父ちゃんが寝かしつけてやるよ。 もう、ほとんど父親の心境だよ。



