結婚してください



その後、しばらくして私の部屋に柴崎さんが指輪のケースを持って現れた。


「お披露目パーティの時には必ず忘れないように身につけて下さい。」


「そう、わかった。それまで柴崎さんが預かってくれませんか?」


「いえ、日頃から身につけて下さって構いませんよ。正式な婚約者ですから。」


柴崎さんに突き返した指輪ケースは戻されてしまった。置き場に困った私はそのまま勉強用の机の上にそのまま放置することにした。


気の乗らない指輪を身に付けたくない。まるで、この家に雁字搦めにされている気分。不愉快だわ。


それにしても、時々英輔にお客が来ているようだけど、いったい誰なんだろう?


第一花嫁修業と言われ屋敷に住んでいるけども、一度もそのようなことはない。


これも英輔が何か企んでいることなんだろうと、これ幸いと私は知らぬ振りをしている。


その夜も私は何もすることがなく使用人が仕事を終える頃に屋敷内を探検することにした。