婚約者との生活が始まっても英輔はキスをしてくれた。
屋敷へ呼んでは夜まで一緒に過ごした。
けれど、英輔の心をつかむことは出来なかった。
ううん、もしかしたら心は掴んでいたのかもしれない。
あの時までは。
けれど、藤堂家には嘘みたいなしきたりがある。
藤堂家の嫡男は家で決められた婚約者と18歳の誕生日に結婚すること。
そのしきたりを守れなかった時は、藤堂家の跡取りとして認められない。
だから、英輔はあの家の跡取りとなるためにあの女と結婚することを決めた。
あんなみずほらしい下賤な女に毎日媚びている英輔を見るのが苦痛だった。
何故、私ではダメだったの?!
藤堂家のおじさまも酷い人だわ。
藤堂家と並ぶ財力・権力を持つ藤沢家の令嬢である私より、何も持たない体一つのあの娘を選ぶなんて。
藤堂家は狂っているとしか思えない。
結局、英輔は最後の一線を超すことなくあの女を選んだ。
ほんとうに 最低の男だわ。
英輔に似たあの男も同じよ。
私が藤沢家の令嬢と分かるとこれまで拒み続けたくせに恋人になってくれた。
そして、頼みもしないのに私を抱いたのだから。
そして、そんな男と部屋に入るのをあの伊澤善道に見られていたなんて。
確か、伊澤善道って英輔の奥様の元愛人だったわね。
ほんとう、最低だわ。



